第27章 大日如来及観音の安置

 堤防の巡検に手抜きがあると、歳月の経過にともない往々にして破損を見過ごしてしまうが、当新田のように堤防の延長が総計数里と長いと日々巡検警護の作業者を配置することも容易ではない。

 とはいえ巡検警護を配置しなければ、ある日突然に風波が険悪になったら破損する恐があるため、解決策として次の案を実行した。 

 

 新田堤防の中で最も長いものは第4号、次が第3号と続いており、第4と第3合わせて延長3,330間なので、この堤防上に100間づつの間隔で33体の観世音菩薩の石像を安置し、起点には大日如来の石像を安置するこことすれば、新田の住民で参詣巡拝する者が堤防に傷が生じたのを見つけた時にこれを報告する方法をとった。

 なお、これによって堤防を区画すれば、例えば何拾何番観音の右、又は左に何々の事があると明確になり、堤防の中の出来事を的確に把握ができ、人を派遣する時に最も便利であり、かつ自然に住民の信仰心を興起できる利点がある。 

 

 この計画を実行すると聞いた者が争って賛成し、寄付の申込みが多く、遂には大日如来を初めとした33体の観音の全てが信心深い者の寄附で安置することとなり、以来住民自から信仰の心を起し、老若男女が農事の余暇に参詣巡拝するようになり、堤防が住民でにぎわった。