先年、実業界に尽瘁する功によって藍綬褒章を拝受し、貴族院議員在職中、勲四等に叙せられ、今回また正六位に叙せられた次第である。
しかし、本年正に六十六歳、財貨倉庫に充実して、百年臥食の糧を蓄積しながらも、なお倹素身をもって実践し、昼弁当はうどんかけ三つと言った調子で活動しつつあるが、今回叙位の恩典に欲したことを好機として、明年早々実業界を引退するとの説あり、果たして本当か。
いずれにしても君のごときは一代の幸運兒と言える。
なお君の引退は伊藤君とは異なり、事業界の引退であるので、その後は親戚の富田重助氏が継ぐことになるであろう。
(大正四、十二)