第16章 澪留の準備 附貝俵の応用

 大手堤防の澪留については童浦村大字浦村の官有地より土砂を採収し、小砂利を入れた叺(かます)を造って運送していたが、牟呂に1ヶ所の貝山(貝塚?)があり、この貝山に堆積した貝殻を収拾して俵装にした物を土俵の代用に使うこと考えた。

 貝俵は普通に使用する土俵に比べ重量は軽く一人の肩に2俵担げるので大に運搬の手間を省けるのと、土俵は海底に入ると波涛のために徐々に洗い去られる心配があるが、貝俵なら永く海底に留まる利点がある。

 つまり、土砂採収と貝俵との二つの利点を使い分けることが、実に本工事に適した方法なので、これを利用して澪留工事の準備をした。

 また人夫の人員確保は付近の各村民が確保できるし、この地方の習慣として貧富の差の関係なく老若男女が工事に従事することを嫌がらないので、非常に好都合である。