当時故田中不二麿氏等が盛んに勤王論を唱える時分で「異国の物品を商う者は国賊也」と抜刀で切り込んだと言う、かの紅葉屋事件なるものは、すなわち君の店頭に於ける椿事である。
また維新の際、士族の封換公債が下落した時に、これを買い占めて巨利を得たのを手初めに、伊勢、三河等にて山林荒山蕪地の払下げを受けて造林、または開墾によってトントン拍子に巨万の富をかち得て、ついには名古屋旧来の富豪をしのぎ、日本長者番付に天下の富豪として乗せられるようになったものである。
その中でも、かの神野新田は君の最も誇りとすると所で、