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 伊藤君(松坂屋デパートの創業家)と同時に同じく実業界引退説を唱えられている神野君は、伊藤君とは全然色彩を異にしている。

 すなわち一方は三百年来の富豪、一方はわずかに先代(七代金平)から発展が始まった、いわゆる悪く言えば成上がり富豪で、ここに個人的および対社会的に非常に懸隔(非常に差)が生じ、ことごとに〇れが発揮されているのも面白い。

 君は海部郡江西村の一農家に生まれて、それに名古屋鐵砲町紅葉屋の養子であった実兄の遺産を受け継いで、同じく紅葉屋の屋号で維新の際より、早くも洋反物などを輸入販売したものである。